お年玉争奪戦
「新年あけましておめでとうございます!」
アジュール一家がお正月の挨拶をしたのはお昼をとっくに過ぎた頃だった。
「はいはい。今年もよろしくね」
宿屋のオヤジは微笑む。
「ということで、挨拶終わったからアネゴお年玉ちょうだい!!」
「右に同じく!」
アジュールの重い拳が二人を襲った。
「「あぎゃん!」」
「全く。どうしてアンタたちにお年玉をあげなければいけないんだい。あたしは別に親でもなんでもないんだよ?」
アジュールは呆れた表情を浮かべた。
「だってさ、お年玉って目上の人が目下の人にお金をあげる行事なんでしょ?だったら、当然パーティリーダーたるアネゴがおこづかいを配るっていうのは当然のことだと思うよ」
「そうそう。そもそも普段から純戦士系のアネゴを俺が回復をしたり、ヒサメが補助魔法をかけたりして一生懸命援護しているんだ。だからその苦労をねぎらってくれたってバチは当たらねぇぞ」
謎の連携プレーを見せる二人だった。
「アンタたちねぇ……。こういう時ばかり団結するんだから。じゃあ、あげてもいいけど、お年玉をもらうってことはすなわちこういう事を意味するわ」
「よっしゃー!アネゴの説得に成功したぜ!」
「金額どのくらいだろうね。ミカゲと同じぐらいほしいなー」
二人がわくわくしていると……。
「お年玉をもらうようじゃ、アンタたちまだ子供よ」
二人に20のダメージ。
途端に、シュガは裁縫道具を取り出した。
「そ、そうだよなー。ヒサメに付き合って説得してやっていたけど、俺には何も関係ねぇし。さて、内職の開始だ!」
「違うよ。もう大人になっているヒサメは、子供のシュガのために色々言ってあげていたんだよ。感謝してよね」
「何だと!お前こそ必死にやっていたじゃねぇか!俺はもう大人だからお年玉もくそもないし!」
「えー、それじゃあそもそもシュガって何歳なの?」
「えーと……22?」
「前は19って言っていたよねー?年齢不明ってことでヒサメの勝ちだね!シュガよりヒサメの方が大人!やった」
「うわっ!なにその超理論!?おい、ちょっと表へ出ろや!!」
アジュールの尻尾が動いた。
「必殺『愛のムチ』!」
「「うぎゃ!」」
倒れる二人。
「相変わらずこんな感じですが、今年も皆さんよろしくお願いします」
アジュールは頭をさげた。